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「初めてのプロジェクトリーダー」に考える [日本語教育]

私は日本語教育に関わっていて、特に現場からスタートした教師なので、やはり自分に求めていることの第一は<いい教師であること>です。
いい授業ができる、学生に喜んでもらえる、それから時には<日本語>だけでなく<教育>を最優先課題とする。
その点は、今もやはり根源的な部分だと思います。

けれども、長く(というほどでもないか)仕事を続け、立場や組織や環境や状況が少しずつ変わってくると、もちろんですが必要な能力も少しずつ変わってきたり、新しい視点を自分に追加しなければならないことがあります。
それはきっとどの日本語教育環境でも起こりうることで、例えば「労務管理ができる」だったり、あるいは「企画を通す」だったり、「人をつなげられる」だったり「高度な事務力」だったり、もちろん「優れた専門性」だったり、いろいろなんだろうなと思います。

さて、私が今ハンガリーの日本語教育で直面している、とある分野の課題は「リーダーであること」。
これは、なかなか切実です。いやもう、涙ものです。
リーダーシップ論のようなものをゴソゴソ読み返しては、ため息をついたりがっかりしたり。

最近見つけたのは、「@IT情報マネジメント」の中の「プロジェクト管理」。
システム開発プロジェクトを対象としています。

例えば、岡島幸男さんという方が書かれた、記事「初めてのプロジェクトリーダー」の中の「開発者からリーダーへの視点のきりかえ」。
ううむううむ、なるほど。漠然と感じてたことがすごく整理される。

>技術者として<この場合は日本語教師として?>、「おいしい」部分は、ほかのメンバーに譲らなくてはいけません。リーダーはプログラミングをしないということが前提ですが<今のウチの状況だと、コンテンツをつくらないということが前提ですが?>、万が一現場の手が足りなくなった場合は、比較的リスクの低い(時間さえあれば誰でもできそうな)個所を選び、ひっそりとやり遂げましょう。リスクの高い部分をリーダーが抱え込む英雄的行動は、ほとんどの場合事態を悪化させます。問題は、チームとプロセスの力で解決するのがベターです。

。。。そうそう、あるなあ。
日本語教師だと「自分がやっちゃえる部分」というのがあるし、しかもそういう部分は自分にとっての最大のオハコ。
本当に仕事があふれている場合「この作業をやるね」というと、その場ではもちろん感謝される。
でも、確かにそれで視野が狭くなる、部分が気になり始めるというのは痛いほど感じてきたこと。「仕切る」「まとめる」ということにどう徹底するか。例えば、「私がやっちゃう」じゃなく、じゃあそこに新たな人をどうつけるかという発想や、今までの工程に無駄はないかと見直す作業。
もうひとつ常に念頭に置くべきは、<日本語教師的な仕事をしない>ことへの罪悪感。また、周囲の意識。そういった問題にどう関わるか。
と同時に、他に任せることの本当の意味。任された人たちが「ほったらかされた感」を持たれないようにしたり、無意識にこちらの逃げの言い訳になってしまわないような関わり方。それをどう自分に対してアレンジしていくか。


そして、
>「チームプレイ」「顧客満足志向」「中庸であること」です。どれも当たり前に感じられるでしょうが、実に簡単にこれらの価値はないがしろにされてしまいます。
>意識の奥底には「最後には、自分がなんとかしよう(できる)」という思いがあるはずです。しかし、それではどうにもならない状況があり、その思い込みが、かえって油断を生み、最終的な状況を悪化させることもあります。
リーダーが混乱し、何をすべきか分からなくなってしまうと、チームはやがて混とん状態に陥ります。

・・・ああ、本当だ、本当だよ。
こんなことって、ものすごく誠実で、ものすごくお互いを大切に思っていて、ものすごくいい関係のチームの中でも、本当に本当に本当に、悲しいぐらい簡単に起こりうる。

でも、マイナスのことばかりではない。
まず、チームで動くことの面白さ。まだまだできているわけではないけれど、「自分に何ができるか」より「自分に何ができないか」「何をしてはいけないか」「他の人にしてもらうべきこと」「他の人の力をどう見出すか」を意識に置くことの面白さ。

それから、「プロセスの力」を感じる面白さ。
本当にプロセスそのものが持つ力というのがある。
他力本願的な意味ではなく、その力を生かす土壌がこちらにないと、絶対に生きてくることのない力として。


ソフトウェア開発でしょ、日本語教育には関係ないじゃん、と思われるかもしれないけど、もうひとつ私がよく読む
日本語でケアナビ開発室」、
特に「こちら日本語でケアナビ開発室」には、しみじみと励まされます。

私はチームに恵まれているとも思います。
同じ部屋のみんなと、現地の先生たち。
誰もが「自分の仕事」と思え傍観者をつくらない、そんなチームになってほしい。
と言うとエラそうですが、いろいろ反省すること多々あっての心機一転の記録でした。
一年たってふりかえってみれば、「あま~いあまい!」と、また言ってるかもなあ。
春節来たしね。新しい一年、がんばろ。


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コメント 4

村上吉文

ITのプロジェクトマネジメントは日本語教育のコース開発の流れと重なるところがありますから、参考になりますよね。僕もモンゴルにいたときには一生懸命勉強したものです。
by 村上吉文 (2010-02-22 10:31) 

juni

>村上さま、
IT系のマネジメント、本当に参考になりますね。これは経験してなかったら感じなかったことだなと思います。
そしてまた、村上さんもモンゴルで勉強されてたと聞いて励まされました。
ここへ至るまでは落ち込んだり葛藤したりの繰り返しでしたが・・・
帰るとき、今よりも少しでもよい報告がしたいというか、一緒に働いている人たちが今より気持のいい状態で関わってくださっているような、そんなプロジェクト運営がしたいと思ってます。
by juni (2010-02-23 06:45) 

すなみほくと

ケアナビの開発を担当しています、すなみです。開発室のブログを読んでくださってありがとうございます。こちらも大いに「励まされる」思いです。
プロジェクトのデザインというのは、言葉では言い尽くせない、喜びも悲しみもいろんな要素が含まれていると私も感じます。特に日本語教育という文脈でそれを書かれているのは、今まであまり目にしたことがなかったので、頷きながら読ませていただきました。
by すなみほくと (2010-03-15 23:44) 

juni

>すなみ様、

びっくりしました。光栄です。
「喜びも悲しみも」・・・本当にそうだなと思います。
この日記には立派なことを書いていますが、その後も状況に翻弄され、どーんと落ち込み、そして気がつくと先輩にひっそりたすけてもらっていて、感謝の反面オノレの無力さにますますがっくり・・・の繰り返しです。
でも、プロジェクトに関わっていなかったら得られなかった喜びは非常に大きい。
直接教授の第一線からは今ちょっと退いていますが、今だからこそできることをしっかりやっていきたいなと改めて感じました。
開発室ブログ、これからも楽しみにしています。
by juni (2010-03-16 08:12) 

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