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「海外で教える」 [いろんなことから考える]

『月刊日本語』2月号特集「海外で教える」特集の中に、ポーランドで働いていた仲間の記事を発見。
単身クラクフの日本語学校に派遣されていた時の話を読んで、何だかいろんなことを思い出してじーんとしてしまいました。

海外で教えるというのは、大変。でも、面白い。
私自身は日本語教師としてのスタート時はさほど海外志向が強いほうではなく、日本も好きだし、日本に住むのはとても楽しいと思っていました。
日本語教育もどちらかと言えば興味を持っていたのは日本に住んでいる生活者の支援のほうでした。でもそのためには一度は自分が海外に出る経験も必要かな、と思っているうちに、気がつくと海外のほうがメインとなってしまったクチと言えます。

今まで<派遣>という形で、しかも地方都市や、日本語がわりとマイナー・ランゲージとしてとらえられている国に派遣されることが多かったので、私が見てきた世界は非常に限られています。
でも、その立場の中で思ったことがいくつかあります。

例えば、海外では「何でもやる」「何でもできる」という状態を求められることが多いということ。
「教えてもらう」とか「指導を受ける」とか、「自分はまだまだだからこれしかできない、これしかやらない」とか、日本語教師もネイティブ話者の数も限られた国では、そんなこと言っていられません。
まず、授業がそう。
「作文教えたことないから」とか「コースデザインなんてわからない」など、言っていられないのです。どんな新人だって、やる時はやらなきゃならない。それは日本でももちろん同じだけれど、海外のほうがこういった状況に遭遇する可能性はかなり高いように思います。
それから、機関によっては上司であることを求められたり、外部機関との調整を必要とされたり、一転して掃除やお金の計算や広報のためのビラまきや、まさにいろんなことをしなければならない、できなければなりません。

と同時に、相手を尊重して、相手にやってもらったほうがいいことも絶対あります。自分が本当にできないことは抱え込みすぎない。自分がやらないほうがいいことも自分から手放していく。誰かに任せる。誰かを活かす。そういうことを見極める大切さと難しさも感じます。

ポーランドの友人も単身で派遣されて、カリキュラムをつくったり教科書を選定したり、それから予算をとって「日本語学校祭」を企画・実現したりと、いろんなことに積極的に取り組んでいたとのこと。素敵な2年間だったはずだし、そういう大切な時間は、やはりその都度その都度の悩みや壁があって、だからこそ生まれてきたものなんだろうな、とも思います。

私も<海外>という場所にはずいぶん育ててもらいました。
かつて、非常に早い段階で、予想以上に重い責任の中に放り込まれてしまったことも、やはり海外ならではの経験だと思います。
中にはトンチンカンな活動をしていたこともあったし、何かをしたくてもどうしたらいいかすらわからないこともありました。後から、「どうしてあの時はできなかったんだろう」と思い出して申し訳なくなるようなことはたくさんあります。だけど、やはり海外の面白さはとても強く感じます。

ただ、「海外だからできない」「海外だからぶつかる壁」は、特に自分が一教師だった頃に痛感していたことでもあり、その環境をどう整えていくかということ。それは今後もずっと考えていきたいと思っています。

写真はポーランド・クラクフの夕焼けです。

yuuyake.jpg
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コメント 2

アイシス

なんて美しい夕焼けなんでしょう。。。

ところで、ゆにさんの数々の日記にはうなづけるところがとても多いです。
私も教育担当として、販売員に細かいことをいちいち指摘するなんてことより、仕事に対してのモチベーションを自らあげさせることのほうがはるかに大事と思いながらやっています。
私のレベルと本物の教師のゆにさんのレベルでは、指導育成の程度と濃さはまったく違いますが、「教える」という点で、ゆにさんの考え方や実践方法は大変参考になります。
毎回いろいろコメントをしたいところですが、たいてい携帯でこのページを見ているため、コメント入力できないんです。。。でもいつも興味深く拝見してますので、これからもよろしくお願いします♪
by アイシス (2011-02-13 21:43) 

juni

>アイシスさま、

最近、どの世界の人と会っても「人を育てる年代」に入っているんだなあと思います。私も細かい部分をいちいち指摘するのはイヤですね。それに、細かい部分しか見えない人になってもほしくないというか・・・。自己反省も含めてですが。
かといって、無意識のうちに放置になってしまいたくはないし、考えることはいろいろあります。

クラクフは12月に行ったのですが、冬の夕暮れも素敵でした!
by juni (2011-02-19 05:08) 

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