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語彙が広がる瞬間 [教室から]

日本語を始めて8ヵ月目の担当クラス。日々、文字教育に取り組んでいるクラスです。
そこで、本日入れてみた語が「かんでんち」。
いや、特に教える必要はなかったのですが、話の流れからいって彼ら知りたいかなと思って紹介してみた語彙でした。

すると授業後、得意満面という顔でやってきた某学生。
「先生、かんでんちの<でん>は、もしかして電話の<でん>と同じ漢字ですか」

・・・ちょっと感動しました。

彼らは既に電話の<電>は知っている。電気の<電>、電車の<電>も知っている。
そこから類推して、新しい言葉、でんちの<でん>も同じ<電>だろうと気がついたこと。音と言葉、意味と構造が結びついた瞬間。
非漢字圏の学習者にとってとても貴重な発見だし、ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、言葉や世界が広がっていく、将来的には抽象語彙へと向かっていく瞬間に立ち会ったような感動を覚えてしまいました。
そしてまた、その時の彼の、大発見をしたような嬉しそうな表情もとても印象的でした。

このクラスでのその時のテーマは「自動販売機」。(で、日本には乾電池の自動販売機があるという話になったわけです)
「自動」はautomaticの意味があるという話をして、「自動ドア」という語を紹介した時、また別の受講生が呟いた一言。
「自動詞」。
そう、「自動詞」の<自動>も同じところから来たのではないかという意味です。
ちなみにクラスで自動詞・他動詞はまだ勉強していませんので、おそらく自分で独学して得た知識と、授業で習った語彙の結びつきを確認してみようと思ったのだと思います。

教えていていつも思うのは、「察する能力を身につけてほしい」ということでした。「察する能力」、それは「発見する能力」と言うこともできます。
それを彼らはどうやってこの8ヵ月で身につけたのか。もちろん体系的に組み込んでいたとはいえ、日々の積み重ねの中で、語彙と漢字の結びつきをいつの間にか理解していたことへの嬉しさ。
今までも「よくできるクラスだなあ」とは思っていたけど、それはどちらかと言えば「よく覚えているなあ」というレベルだった。それが、「与えられたことをよく覚えている」から、「与えられていないことを知っているものから類推できる」段階へと進んでいたこと。

やっぱり、教室って面白い。
試行錯誤って面白い。
わざわざ試行錯誤を繰り返すのは、上手になってほしいから、ちょっとでも新しい世界を感じてもらいたいと思うから。
そういうことろにあるのだなと改めて感じています。

(あと、この教科書の最終版はいつ出版されるんだと聞いてくれた某受講生に・・・もうすぐです!と答えます)
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