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課題遂行と評価 [教師研修と、その周辺]

今年度最後の研修で講師を務めさせていただきました。
「変革期における日本語教育を考える」というテーマで、課題遂行への転換を言語教育が迎えている今の状況と、後半は具体的に評価にどう生かせるかという内容でした。

CEFR、JFスタンダード、Can-doという概念、それから能力試験の改定。
ここハンガリーでは理念の部分は何度も議論されてきたことなので、今ここで私が提示できることは何なのか、それから私がずっと問題と思ったきたことは何なのか。そういったことから、内容の半分は実践編とし、いくつか考えられるテーマの中から「評価」、特に自己評価やポートフォリオについてお話しました。
コースデザインではなく評価としたのは、「自分はコース運営の立場にない」という方や新人の先生にも、ご自分の授業に引きつけて考えやすいのではないかと考えたためです。

私がポートフォリオに最初に接したのは、多分10年ほど前のことになると思います。
その時は自分自身が新人だったこともあって、ぽこっと出現したそれをうまく使いこなすことができず、コースが終わってからも「どうすればよかったのかなあ」と、悶々と自分の中でくりかえすことが多くありました。
私の数少ない取り柄?のひとつが「しつこい」ということで、10年の間気になり続けたポートフォリオにここ1~2年本格的に取り組む機会が得られたことは、本当に幸せでした。

自分の経験もあったので、実践編については、

・自己評価チェックリスト(コースの最初や最後に行う)
・評価基準と評価シート(課題ごとに行う)
・文化体験の記録
・ふりかえりと共有の機会の組み込み方
・現在の職場での活用例

を中心に、コースの中にどう取り込むか、具体的には一時間の授業の中での取り込み方とあるまとまった期間の中での取り込み方、それから実際に使ってみての反応と、提示の仕方によって学習者に何が明確になるかという内容としてみました。

例えば、自己評価チェックリストの中で、B1を目指すクラスの学習者に、「あなたは内容に沿った質問ができますか」とひとつだけの質問を提示して○×をつけてもらうだけでなく、平行して「簡単な質問ができますか」「論理的な質問ができますか」と前後のレベルを提示することにより、「内容に沿った質問は自信がない」場合でも、けして自分の能力はゼロではないということに気がつきますし、また、B1が終わった後の次の目標も見えるのではないかと、そういった具体例をいくつかご紹介しました。

また、ポートフォリオは大人の学習者にはなじまないのではないかという意見を以前から聞くことがありました。
確かにそうかもしれないのですが、実際に自分が30歳、40歳の受講生に対して使ってみて、彼らこそ真摯に取り組んでいるのを見て、「うまく取り入れられれば大人こそ活用できるのではないか」と思うようになりました。

こういった発見も、職場の先輩や、各地で取り組んでいる同業の仲間たち、そして現地の先生方の声から生まれてきたものです。

今回はお話しませんでしたが、いつか機会があればと思っているのは、

・評価シートでは項目だてしにくい能力にこそ、ポートフォリオは活用できるのではないか
・目標の明確化を主にお伝えしたが、それが教師側の押しつけになってはいけない

という部分です。

今回は「いろんな立場の先生に役立てていただければ」という気持ちから「評価」を取り上げましたが、考えてみればプライベート指導に携わる先生もたくさんいらっしゃる中、もしかするとコースデザインを取り上げても興味を持っていただけたかもしれません。

言語教育も教室の外へとどんどん飛び出していく今、私が興味があるのはやはり<教室>だなと再確認した時間でした。
ネットででも独学ででも勉強はできて、特に若い人はアニメやドラマからぐんぐん日本語を吸収していく中で、それでも教室へ行く、という、時間もお金もかかる方法を人がとるのは何故なのか。教室という場は変革期の中で、何を提示できるのか。

私の課題です。
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