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アウトプットとプロジェクト評価 [教師研修と、その周辺]

<自分をふりかえる>とか<自分を語る>とか、日本語教育の中で意識的に取り上げられているのは教師研修や教師成長に関してのことが多い気がするのですが、プロジェクト運営・評価の部分でも活用ができるように思います。

ただ「語り方」が難しい。
特にプロジェクトとなると、形になるものや成果物を出すために、それぞれが専門のこだわりの部分の何かを妥協したり切り捨てたりしているので、うっかりするとその「我慢したこと」を思い出したり不要に傷つけあったり、という可能性もなきにしもあらずなのですね。
でも本来、評価、ふりかえり、中間報告というのは次につなげるために存在するわけで、いい形のプロジェクト評価、ふりかえりをするにはどうすればいいのかなあ、と漠然と考えることがよくありました。

このたび、職場で関わっている教材開発で、複数機関における試用報告をする機会があったのですが、その時、あ、これもひとつの方法だな、と思うことがありました。それは何かというと、「アウトプットの活用」なんですね。

アウトプットをするためには、やはり自分の中できちんと推考しなければならない。客観的に見なければならない。問題点もよかった点も含めて考える必要がある。それから、今後の課題や将来的な展望も出すことになる。プロジェクトは複数の人間が関わっているので、それぞれがお互いの意向を持ち寄ることになる。

意図せず、という部分もあったのですが、日々の慌ただしさの中でなかなか聞けない他の機関の報告を聞いたり、改めて皆、共通の部分として「いい仕事をしたい」というのを持っているのだなということを感じることができました。
「ひとりひとりが話す」「多くの人の前で話す」という形もよかったのかもしれません。

今回は口頭発表でしたが、Webを使うケースもあります。
そのひとつの例が、「こちら「日本語でケアナビ」開発室」だと思います。

プロジェクトによって、人間関係や成果物に対する共通の思いをつくること。自分自身の今後につなげること。
そのことは、もうしばらく考えてみたいなと思っています。

実践研修について思うこと [教師研修と、その周辺]

実践研修を敢えてやろうと思っていて、特にこの秋からはなるべく理論や背景や考え方のようなものを組み込もうとしているのですが、それには理由があります。

「実践は楽しいけど、学んだことが直接今の現場で使えるわけがない」
「実践は、1回や2回受けたからって何も変わらない」
「受けてもいいかな。今は役に立たないけど将来役に立つかもしれない」
実践研修について聞く、そんないろいろ。

わかる、わかる、わかる。
という気持ちと、
違う、違う、絶対そうじゃない。そうじゃないはず。
という気持ち。

私自身は別の分野から転向してきたので日本語教育のスタートも遅いし、下っ端時代も長かったので実践研修はどちらかと言えば受ける立場のほうが長い人間でした。
もともと勉強していたのが歴史系だったこともあって、理論に関わってくるような内容は楽しめるし、自分にとっても入り込みやすいし、また、そこからたくさんの刺激を得ていたのですが、実践研修は実は少し苦手だったというのは事実です。「実践とはいっても直接使えるわけではない」という気持ちもありましたし、授業準備に追われている時であればあるほど、「どうせなら、職場で使ってる問題集の教材研究ぐらいがいいなあ」と思ったりもしていました。

それは当時の私に「受け取るだけの力がなかったから」と言ってしまえばそれまでなのですが、主催者側にまわることも多く、そして実践を求められることもある今、改めて感じるのは、参加してくれる人にそんな気持ちを持たせるような研修は、そもそも何か問題があるんじゃないかなということです。
そこでふりかえると、確かに当時も自分にとって印象に残る研修がいくつかありました。
それはどういう研修だったかと考えると、「発想転換させられるような」「はっと気付かされるような」実践研修だったのだなと思います。

アイスブレイキングやゲームをたくさん教えてもらった研修に参加したことがありました。
ひとつひとつの活動が明日の授業でそのまま使えるというのもありましたが、心に残ったのは、講師の先生が言われた「無駄と思えるような遊びの時間を通じて、クラスの人間関係ができていくこと」。
あ、そうだな。
と、思った瞬間でした。ごくごく新人の、駆け出しの頃です。

私、授業の中でもちろんゲームとか遊びの要素を入れることにしていたけど、「上達」「習得」以外に考慮していたことはあったかな。人間関係に結びつけたりしていたかな。
ゲームや活動をしても、最終的には「個人」しか見ていなかったんじゃないかな。
「学習者が遊ぶこと」ことをむしろ「時間の無駄」と無意識に見ていなかったかな、いや、そこまででもないかな、どうかな。

そんな風に考えながら受けた研修は、私自身にとって実になるものだったのを覚えています。去年あたり、少し<協働>を考えていたのは、昔々のそこに原点があった気もします。

「<明日すぐ役に立つもの>をやってもすぐには使えない」
「ベテランは理論研修に、新人は実践研修に」
「実践研修は、来てくれた人が元気になって帰ってくれればそれでいい」

いや、ダメだ、と思う、それでは。あるいは、それだけでは。

みな、大事な時間を割いてわざわざ来てくれているわけで、今日が終わっても明日が終わっても残るものを残したい。そして<実践>は原点。明日授業を行うということは、そもそも教師の原点のはず。少なくとも、主催者側としてはそういう真摯さのようなものでもって、研修を行わなければいけない。

そういうの、できているかなあ、という反省のような気持ちも込めて、今これを書いています。

語彙の勉強法 -ことばをおぼえる、ことばをふやすー [教師研修と、その周辺]

今年第一回目の勉強会を職場で行いました。テーマは「語彙の勉強法ーことばをおぼえる、ことばをふやすー」。

語彙教育にはいくつかの視点があり、「使用法に注意する」、例えば、「<やがて>スピーチコンテストが<開場>します。どうぞ<熱弁>を<所望>しています」といったような間違いが出ないように指導することは、もちろん非常に重要です。
が、それはまたの機会にということで、今回は主に「記憶・定着」といった視点から90分話をしたり、意見交換をしたりしました。

主な内容は、

1.さまざまな教室活動やゲーム(連想ゲームやクイズ、マッピング、ジェスチャー、クラスメイトに自分の好きな言葉を紹介、カルタの活用、フラッシュカードや絵カードの使い方、言葉遊び、借り物競走など。マッピングや連想ゲームは実際にグループで体験)
2.中長期的な定着をねらった授業実践
3.それら活動を支える語彙習得理論

の三点です。

準備に際してかなり参考としたのは、英語教育の語彙習得理論と実践でした。
「語彙・定着練習」といったキーワードでgoogle検索をかけると、出てくるのは圧倒的に英語教育に関する理論や実践です。現場の先生方からの発信も多く、「語彙の活動をゆっくりできればもちろん素晴らしいが、現実には授業の中では時間がない」「ゲームや教室活動はその場では面白いがすぐに忘れてしまう」「やる気のない学習者をどうすればいいか」など、特に中学校の現場に即した具体的な内容が多々ありました。これらは日本語教育現場から聞こえてくる悩みに重なるものの多く、<教授法>、それも理論に裏打ちされた教授法を追いかけてみたいというのが、最近のテーマになっていた私には非常に考えさせられる内容ばかりでした。

例えば岡田順子先生の「語彙習得理論を“現場目線”で活かす!」で紹介されている「エッセイライティングと語彙教育~生徒がつくるオリジナルな単語テスト~」は、作文と語彙教育を関連づけた体系的な活動です。
この活動は次の手順で進められます。
①テーマを決めて作文を書く、わからない言葉は先生に聞く
②表現できなくて先生に聞いた表現や語彙には下線をひいて、リストアップしていく
③リストをもとに「自分だけの単語テスト」を実施する

①の部分は例えば「第●課で勉強した単語を必ず5つ以上使ってください」のように指定することもできるでしょうし、できた作文をクラスの中で読みあったり、クラスメイトの単語リストを全員で共有していくなど、いろいろ広げていくことができるなと思いました。

ゲームにしても、これら「勉強」的な活動にしても、ひとつのことからさまざまな応用や展開のさせ方があり、また何を目的にするかでその展開のさせ方が変わってきます。
例えばマッピングなら、「知っている単語を思い出す」ためなら辞書をひかせず個人活動として行えるでしょうし、クラスメイトとわいわい活動していくことは、「知らない単語をクラスメイトから学んで言葉を広げる」ことにつながってきます。

最近大切だなと改めて思うのは、こういった学習の背景となる理論をおさえておくこと。
もちろん「ゲームの楽しさ」「アイスブレイキングとしての雰囲気づくり」自体すばらしい活動ですが、「意味に結びつけることによって記憶に残りやすい」という「深い処理」仮説や、関連性のある語彙は脳の中でも近いところに入っているという「メンタルレキシコン」を知っておくと、そこからさまざまな活動を派生させたり、クラスの状況に合わせて応用をさせる時にも、活動の本来の意図がブレにくくなるんですよね。

ブダペストの勉強会については、こちらもご覧ください。
http://www.jfbp.org.hu/index.php?action=showart&id=63
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